2007-07-12

『電子念佛機』とは何か:下 (付:萬佛寺に行ってみれば)

中国旅行の末に辿り着いたものは『電子念佛機』だった!?

偶然で必然の『電子念佛機』と出会ってしまった旅行記の
第二弾でございます。

。。。

帰国の前日、居ても起ってもいられないジオラマチームは、まったく何の
約束も保障もナイままに、香港島の電子念佛機の総本山(らしきものと、
この時点では思ってた、結果、大正解!)に出向くという、ちょっとした
冒険の旅に出るのである。

もっと電子念佛機を知りたい、そもそもこれはどーゆーモノなんだ?
誰がこーゆーモンを作ってるのだ??? 電子念佛機を手に入れてわずか一日で
我々の得体の知れないモチベーションは頂点に達し、こうなったら、
直接現場に乗り込む他にナシという判断を下すことになった。

手がかりは、電子念佛機といっしょに同封されていた小さな商品説明の紙に
記載された住所と日本から持ってきた観光案内用の簡単な地図のみ。

香港島、中環(セントラル)にフェリーで渡り、トラムに乗って、初めての
街に降り立つ。歩くこと5分ほど。雑居ビルの4階にそこはあった。なんだか
あっけないぐらい簡単。もう誰かに導かれてるんじゃないかってぐらい。

エレベーターを降り、入り口の前で深呼吸。再度、看板を確認。意を決して
ブザーを鳴らすと、分厚い眼鏡、ちょっと猫背で、少し足を引きずっている
男性が姿を現した。

ネイホー、ハロー、、、どうやって要件を伝えようかアタマはぐるぐる
あてもなく廻り始める、と同時に、手は前日にゲットしたペンダント型の
念佛機を素早く指差していた(それを首から提げていた真由子嬢は、グイっと
差し出していた)。これです、これ!と二人。

重たそうな眼鏡のつるをちょっと持ち上げ、その念佛機と我々の顔を
一瞥すると、そのおじさんは、そういうことですか、さあどうぞ、とでも
言うように(もちろん広東語で)鉄格子のような扉の内側に我々を招き入れた。

ブルース・リー先生いやジャッキー・チェン、いやMr Boo!、いずれにせよ
香港映画から、そのまま抜け出したかのような風貌に、その動作に、ただただ
感激し軽く眩暈すら覚える。ここまでのシチュエーションだけでも十分なのに
このキャラクター!もはや『ドッキリ』じゃないかと思うぐらいだった。

入り口近くのイスに腰掛けて、こちらを見ているおじさん。ぱたぱた歩き回り
なにやら忙しそうなおばさん。店内=ショップというよりは事務所兼倉庫。
あちこちに机や椅子、商品なのか、はたまた売り物というわけではないのか、
判然としない数々のモノや調度品があふれている。そのせいで、ぱっと見では
電子念佛機そのものはどこにも見えない。

一瞬にして情報がドバっと押し寄せ、視界がせばまり、おずおずと前に進む
ことしかできない我々に、スッと行く先を導く手が指し伸ばされた。あきらかに
ヨソ者の挙動不審な人間に、サッと椅子を並べ、座るように促しつつ、すべての
事情は了解した、と言わんばかりに怒涛の勢いで話し始める一人の女性。

彼女は、生粋の(と言う他ないだろう)香港人。フランスに留学し、日本の企業で
働いたこともあり、大のサッカーファン。自分の信ずるところをもっと広めて
いくために電子念佛機に辿り着いたまでは良かったが、その教えをこの機械の
カタチにすることに協力をしてくれる者がしばらく見つからず、ようやく
巡り合ったのが、ここ、この総本山というわけだった。

あなたたちも、そういうこと?と彼女に聞かれた我々は、ちょっと答えに
窮して、いいえ、ただ我々はブッディズムを勉強している身であります、と
正直にお答えした。

彼女の信ずるものと、我々の学究するものの相違に、ちょっと残念そうに
しつつも、彼女は決してこちらの信仰を否定するようなことはなく(実際の
我々は、純粋に仏教を信ずる者からは、ほど遠いのだけど)、かといって自身の
思うところの素晴らしさをきちんと伝えることも決して怠りはしなかった。

ものすごくエネルギッシュだけど、おおらか。ちょっとまっすぐ過ぎるけど
ユーモアに富んでる。どこにも根拠はないのだが、香港人っていうのは、
こういう人なのだろう、と思う。ま、当の本人も中国人ではなく香港人とは
言ってたけど。

高質量冷激光念佛機

たった一日前、我々は電子念佛機のとりこになった。

それは彼女のようなピュアな宗教心からでも、よしビジネスだ!と商魂
たくましい商人根性(ちらっと思ったりはした:笑)からでも、もちろん単なる
冷やかしからきたわけではなかった。そこんとこは、もう本当に、純粋な興味
というか、大いなる好奇心によってのみ突き動かされた結果の今なのだった。

だから、この期に及んで、ちょっと怖気づく、何か得体の知れない商品を
売りつけられる、とか、とんでもない商談が展開される、とか、宗教的な
おっかない感じになっちゃうんじゃないか、とか、、、そんな考えられる
限りの様々なパターンの不安に駆られるのも当然と言えば当然だった。

だって、我々は、きちんとした話の内容をしっかりアタマに準備してから
来たのではなく、先にカラダが動いてしまったばかりに、よーく考えたら、
そもそも話すことがあるんだかないんだかもハッキリせぬまま(言語的に
話が通じるのかどうかさえ疑問だったし)、行くだけ行こうって決めて
しまったのだから、いまさらだけど、びびって当たり前なのだった。

ただ、そんな心配のあれこれも、ここに偶然に居合わせた彼女のおかげで
すべてといっていいほど解消されてしまったのだが。

偶然に、、、。

そうなのだ。彼女は店の人でも何でもなく、我々と同じ、お客さん(!)
だったのだ。

お店の人、と最初から勝手に思い込んでいたのが事態を飲み込ませにくくした
原因ではある。だが、登場の仕方はどう考えても店員さんだったし、その後の
話も、取り様によっては、我々の訪問意図を聞き出すための高度なテクニックの
一環としての身の上話のようでもあった(と勘違いしていただけなんだけど)。

もろもろの心配がある上に、言葉巧みなマシンガントーク。となれば、完全に
気のおけない状態を作るというのは、どうしたって無理な相談なのだが、反面、
フレンドリーさと出来過ぎのサービスに、和み、安心していたのも事実。
さすが商売人、という気持ちで感心もしていて、それが、そもそも勘違いの
始まりだったわけだ。

もちろん今にして思えば、当初から、私もゲストである、従業員ではない、と
いうことを告知していたのかもしれないが、さすがに、こちらは極度の緊張を
していたせいか、それらしきことを言ってたな、という記憶はまるでない。

だから、もし彼女が本当にやり手の敏腕営業ウーマンだったら、異国の地で
右も左もわからない我々に一生背負い込むような契約を成立させちゃって、、、
なんてこともできたのかもしれない。

しかし、実際は、彼女にしてみれば、我々に接していたのは親切心以外の何物
でもなかった。事実、彼女のおかげで、英語から広東語の通訳のみならず、
俗に言う口利きみたいなことまでしていただき、研究(!:とりあえず、この場
では、そういうことになってます)の為に購入を決めたいくつかの念佛機は
破格の値で、さらに一つは無料で、その上にお守りまで(!!!もちろんキッチリ
身に付けてますよ)いただく結果と相成ったのも、当初抱えていた心配ごとを、
けっきょくは気にせず済んだのも、いずれもすべて彼女がたまたまここにいて
くれたからこそ、なのであった。

我々にしてみれば、このように振舞ってくれた彼女の善意やら真意やらは、妙な
違和感から始まり、話が進むうちにようやくおぼろげな輪郭がチラチラと見えて
きたあたりでグッと加速し、さらに会話を続けながらもじっと考えてたら、
ふとした瞬間に、一番最初を踏み違えたんだ、と、まさにピカっと稲光が走って
納得、エブリシング オーライ!だった。つまり、勝手に誤解をしていて
申し訳なくもあり、でも素直に話を聞いてもいたから助かったなぁ、と、
思い込みのおっかなさと偶然の出会いのありがたさをひしひしと感じた出来事
なのだった。

で、具体的に、どういう話になったかと言うと、

我々が現れる前までに自身の交渉を済まし終えていた彼女は、てきぱきと我々に
いきさつを話し、こちらの話を聞きだしつつ、彼らに伝える。我々を迎え入れて
くれたあのおじさんは、ここのオーナーで、とっても正直者だ、と。それは他を
いろいろ見てきたからわかる、と。私は信ずるものが違うけど、ここなら問題
ない、同じものを信じるなら、なおさら安心だ、と。

だから、あなたたちが信ずるところの教えを広めるのに、この念佛機が必要なら
今後のやりとりは手伝う、と。そして私は私自身の信仰のため、これからも
ボランティアとしてお寺を清め、お祈りし、電子念佛機を無償で配り、自分と
人々のための活動を続けていく、と。ゆえに、あなたたちもそうしたらいい、と。

、、、そこまでは考えていないのですが、、、。我々の次元の、はるかかなた
先に彼女はいて、本当に熱心に教えを実践されているということなのだが、
どういうわけだかそこには、ひとつも、いやな末香臭さや、お説教めいた
ところがなく、むしろ清々しくて楽しそうな雰囲気に満ち溢れていた。

こんな具合で、電子念佛機にまつわる濃密なやりとりは進んでいったのだった。

蓮型電子念佛機

どのくらいの時間、この念佛機の総本山にいたことだろう。彼女の話は本当に
面白くてためになり、エネルギーに満ち溢れてジョークもたっぷりで、件の
眼鏡オーナーに出していただいたお茶を飲むのも忘れるほどだった。

ひとしきり話を聞いたあと、太腿がびっしょり、すでに冷たくなっていることで
ようやく我に返り、グルっと周りを見渡せば、我々の座っていた窓際のテーブル
位置からずっと奥にある棚には、膨大な量のカセットテープがぎっちり並んで
いることに、いまさらながら気がついた。

おそらく、このテープ、念佛機以前の唯一の音源で、直接レコーディングされた
マスターと覚しき年代モノ(かなりホコリまみれっぽい風情だったから)、
となれば、この中には大変貴重な録音も残されているのだろうと推測された。

と言っても、電子念佛機に入ってるのは、ほとんどは、ポップなテイストの
ボーカル曲(って言っていいのかな???)だったりするのだが、さすがに棚に
鎮座した大量の磁性体はそれじゃなく、まんま読経的な、念仏をブツブツ唱える
ベーシックかつ本来的なスタイル(念佛機の中には、まさにこの「念仏」が
収録されてるモノがある)なのだろう、という気がした、というか、それじゃ
ないと困る、いや、困りはしないが、、、。

シンセを使った軽くてノリのいい曲が多く、簡便さ極まりない電子念佛機とは
対照的なこれら一群のズッシリとした重量感のようなものは、これはこれで
とても魅力的ではあった。できることなら数ヶ月かけて全部のテープをじっくり
聴きたいと思ったぐらいだ。

カセットを発見したこともあり、ここにきてようやく落ち着いた気持ちは、
ちょっとした余裕を生み、グルりと見回したついでに、さらに斜め後方まで首を
ねじってみたら、これまたどうして今まで気がつかなかったのか信じられない
くらい大きな祭壇?、いや、ミニチュア版の朱色のお寺が室内に建立(!?)されて
いるのを発見した。

電飾を伴い、さらに赤々としたそれは、お線香の煙の中で、たくさんの方々を
祀っていて、とにかく、お仏壇レベルというようなの大きさではなかった。
もはや、なんとか寺、と、そう言ってもギリギリでセーフぐらいのものが
設置されちゃっているのだった。

聞けば、いつでもお参りできるように、とのこと。と言われても、そうですね、
誰でも家や職場に寺は必要ですね、と簡単には言えるはずがないのは物理的な
ことからではあるが、そう(ですよね、みんなウチやシゴト場にお寺がなくちゃ
ダメですね、と)言わなくて済むのは、ココが電子念佛機の総本山であるからだ。

ここから産み出されるものは、みんなの働き、集い、憩い、住む場にはもちろん
どんな時でも、身近に敬虔な気持ちを手繰り寄せ、祈りの機会を与えてくれる
という本分を持つスーパー・マシーンであり、それは、部屋に寺を建てる、と
まったくもって同義なのだから。

そうして目の前のテーブルの上に並んだ小さな箱に収まった電子念佛機を
あらためて眺めれば、この掌サイズのモバイルマシンの意義と奥深さとに、
そしてどいうわけだか、香港のこんな場所でこんなことしてる自分たちに、
いいよなぁ、やっぱり旅って、と至極単純な感想を持ったりするのだった。

。。。

いかがでしたでしょうか?
正しい仏具としての電子念佛機の在り方を、ご理解いただけましたかねぇ?

、、、なんて、エラそうに言えることなど、実は、何ひとつなく、方便を
あれこれ言う前に、きちんと信心を起こせ、とは、ごもっとも。

実際、、、

香港に来て、どのお寺を巡ってきたのかと、この度、大変お世話になった
彼女から聞かれた我々は、特に決めていたわけではないのだが、なぜか、この(↓)
お寺のことは口を開かずじまいだった。ものすごく魅惑的で感激したんだけど。

この一点において神仏の前で自分を装ってしまったことに、ちょっとだけ
反省したりしておきます。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

香港は尖沙咀より、ちょっと北へ。わずか30分程度だが、あの騒音と排気ガスが
嘘のような山の中、にわかに信じられないスピードでクレーンが動く。









山頂のストゥーパを目指すというより、その卒塔婆(萬佛塔)をなぎ倒しそうな
クレーンの動きに引き揚げられるように400段の階段を上がると、お猿さん。










目指すは萬佛寺。10000体以上の仏像が、10年以上の歳月を経て、そして今も
増え続ける。長い中国の歴史、長い長い萬佛寺の未来計画、長い長い長い、、、。








四方を取り囲む色とりどりのお方たちは、陰陽五行説に基づき定位置に鎮座
されているはずですが、頭上を足繁く行くクレーンでミックスジュースの様相。








本堂には1万体近くの羅漢像と創設者の月溪法師の即身仏が、といっても金箔で
覆われてます。経を詠みながら昇天、その後腐敗もせず、というスゴいお方。








我々がココに来たのには、やはり何かの因縁を感じずにはいられません。
アメフォン「ESQUISSE 3/3」の楽曲『虎』、そして、嗚呼、南無阿弥陀仏!

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