現地時間 10月7日(金) 夜 @パリ <ライブ>
フランスの隅田川、セーヌを渡り、ほんの少し歩けば、明らかにそこだけ開発から
取り残され、グラフィティというよりイラストレーションな装いを施した古びた壁が
ベストマッチな建物が、今宵のショウの舞台だ。
会場のvoutesは、その名の通りアーチ型トンネル構造をまんま利用した建物で
左の穴にライブ小屋、右の穴には御食事処、お手洗いは中庭をはさんで別棟です
という作りで、お天気良ければ中庭でアコースティックな演奏したら、かなり
トレビアンだろう(実際は、やってそうもなかったが)という橋の下スペース。
天井も高く壁も厚く奥行きもたっぷりのライブ会場本体の音はほどよい鳴りをして
その上、真っ暗。お昼過ぎからもろもろのセッティングを始めたが、ちょっと
油断をすると、前日フランス入りした身体に、深ーい闇が、知らぬ間に迫って
くるので十分注意が必要だ。
会場内の方が中庭より明るく感じられるようになった頃、ようやく準備は完了。
使用する機材(!?)の音量がとっても小さいので、マイクングはブツにギリギリ
寄れるところを何度かねらわなければならず、その微調整と、家電専用の
トランスじゃアンペアもいっしょに下がってまったく動作しなくなるスライド
プロジェクターのための、もう少しきっちりリシゴトをしてくれる変圧器の
到着を待っていたりと、なんやかんや気が抜けなかったので、開演時間までは
闇に足元をすくわれることはなかった。(エリック、サトコさん、メルシー!)
ただ残念なことは、ライブ直前に食べたウマ過ぎるチキン煮(ライク、ノンスパイシー
チキンカレー)が、じわじわとイベント途中に効いてきて、出番後、最後尾の客席で
ひとり闇と格闘していたら頭の中でガンガンと、聴こえてくるはずのないパリ大聖堂
教会の鐘の音が鳴り響く。腹は満ち、気は緩み、睡魔から逃れようと、もがけば
もがくほど鐘は大きく鳴り渡った。日頃、頭痛なんてすることないので、コッチは
電圧が倍だからな、とおかしな納得をすることにしてなんとかやり過ごす。
さて、肝心のライブだが、通常は行雲流水フルメンバーで行なう演目を、2台の
オルガニート(世界に誇る「サンキョー」製のシート読み取り式オルゴール)の
半自動演奏に、いくつかの擬音楽器を即興的に重ねて再現する試みをサラっと
行なう。
曲名は「STEP CANON」。まんまタイトル通りで、一定の輪唱形式を保ちながら、少しずつ
階段型のフレーズが足され長くなっていく、という曲だ。用意したのはオルガニートに
合わせC調に移調もしくはハーモニーが美しくなるように書き換えパンチしたまったく
同じシートを2枚。(オルガニート自体を純正調化しておく時間がなかったのが残念)
1枚は、順方向にセット、さらにそのシートを輪にしてエンドレスループ化。もう1枚は
順方向、上下反転、逆方向、逆方向の上下反転、させて、4種類の異なる曲として
送ることで、さきほどの1枚とのランダムな2重奏となる仕掛け。このような発想自体が
とっても行雲流水的なんだな、と曲を作った本人だけがワクワクしながら、「ノイズ」
パートとしての擬音楽器、さらには2台同時に手回しできるように改造を加えた、この
オルガニートセットの音をコンタクトマイクで拾いピッチチェンジした電子音パートも
ところどころ加えることで、一人行雲流水、をやり遂げた。
いま思えば、どうやらここで一仕事終えた感を味わってしまったことで頭の回転力が
著しく落ちこんだのだろう。引き続き、行雲流水の映像を見せつつ英語でその内容を
紹介するコーナーに自らスライドプロジェクターを引っ張り出して突入。しかし、
投影された画に直接、指をさしてメンバーの説明やら、曲の解説やらをするが、案の定
しどろもどろとなる。
だが、誰が見ても瞬時にそれなりの理解ができる、というのが「売り」のグラフィカルな
スコアを指でたどり、プップップッなどと実践すると、聴こえない音を想像してくれて
いるのであろうお客様方の、ほーほーとうなずいてくれる姿が、眩い光越しに見え、
会心のヒットを飛ばした気分に少しだけ浸れた。
ただ残念なことに、やはりまわらないアタマに連動するかのごとく、しばらくすると
スライドプロジェクターが活動を停止。慌てて駆け寄り、汗ばんだ手を使うことで
功を奏したのか抵抗値を下げることに成功、(ウソです。黒こげになっちゃうもん)
プロジェクターが再始動、、、を繰り返すたびに起こる笑いは世界共通でホームラン。
この後数日間、アレは面白かった、と慌てふためいた様子を、旅の宿を提供してくれた
心優しいフレデリックに何度も再現(モノマネ)され、そのたびに大笑いをプレゼント
したわけなのだから、これもヨシということに、してもらわなくちゃ。。。
こうして、ずっこけ英語とプロジェクターの時間をなんとか切り抜けて、一人よがり
行雲流水、のプレゼンテーションは幕を閉じた。思えば、これがフランス初ライブなのに
朝靄に包まれたセーヌのようなアタマのままでやり過ごしてしまったことは、ちょっと
悔やまれもするが、はじめて、も、時差ボケ、も、こういうものなのだろう。
それでもどういうわけだか、ライブ終了後には、飛ぶように、ということはなかったが
行雲流水1st.フルアルバム「picnic」をお買い上げいただいた方々がいらっしゃったのも
スライドプロジェクターの神さまのおかげと、地下鉄の終電に乗り遅れないようにと、
ちょっとずつ遠くなっていく鐘の音に合わせて、お礼のお祈りを捧げてみたりしながら
ホームへと続く長いエスカレーターを急いで駆け下りるのでありました。
2005-11-18
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