ワールドカップ2006欧州予選「フランス対キプロス」をベッドに寝転びながらテレビ
観戦した。ちょうど一ヶ月ほど前の10月12日、フランスは第4の都市リール駅前の
安くて快適なホテルで、だ。
フランスはこの試合に勝利しなければならないことはもちろん、大量得点を挙げねば、
本戦出場が絶たれるとあって、まさに背水の陣、絶体絶命の試合だった。
結果は4対0でフランスの勝利ではあったが、これでも辛くもの、という内容だった。
後日、機材を運ぶため車を出してくれたフランス人がハンドルを握りながら、
あの試合どう思う?
良かったんじゃない。
ありゃダメだ、6対0で勝てた。
でも、ジダンよくやったし、、、
いや彼はもう年寄りだよ。
(カズはどうなっちゃうの!)
と、フランス代表サッカーチーム勝利の喜びではなく、不甲斐なさへの嘆きが
伝わってきたのもうなずける。たかが、ちょっとばかりのシゴトをしに来た日本人に
良かったね、と言われても、フランスはこれでようやく本戦進出が決定したわけだし
(日本はとうに出場権を獲得している)そもそも一度引退を表明した選手が代表復帰して
活躍しなくちゃ勝てなかったことに、つまるところ、どうした若手、と失望するのも
無理はないのかもしれない。
それでも、この時点では、おめでとうフランス!の気分で、街はちょっとばかり
賑わっていたことは確かだ。そう、1ヶ月前のサン・ドニのサッカースタジアムで
アルジェリア移民の子、ジネディーヌ・ジダンが、また新たに活躍した決戦の日。
そのサン・ドニで発生した事件を発端に、アラブ、アフリカ系移民の若者がいまだに
パリ郊外などで暴動を起こしている。5000台近くの車が燃やされ、約1200人の逮捕者の
平均年齢は16歳という。(11/7現在)
ゲットーよろしく郊外に押し込められ、職も教育も満足に与えられない差別と貧困の中
それでも故郷はあった1世の移民たちと、すでに帰るところさえもないのかもしれない、
その2世や3世の差は想像以上に大きいのだろう。
といっても、暴動を野放しにしておいて良いはずはないが、これを機に、という形で
さらなる移民の排斥運動などが簡単に進んでしまったり、果ては大統領選挙にでも
利用されたらたまったものではないと毎日ニュースをにらみ続けているしかないのだが
1998年、20年ぶり、しかも開催国でのワールドカップを制したフランスチームは、その
半数が移民の混成チームで、極右政党党首の「両親が国歌も満足に歌えないチームが、
本当に代表チームと言えるのか」の発言を、ひっくり返したというか、これこそ真実
ということを示した一件を思い出し、望むべきものは、新しい大統領よりも、新しい
ジダンが登場する、そして、これぞフランス!をもう一度、ということを願う他はない
のだろう、という考えに至った。だって、スタジアムに翻るあの旗は、青は自由、白は
平等、赤は博愛、なんだろ、と。
けっきょく、到底一筋縄でいかない移民の問題も、これから語ろうとする音楽のことも、
歴史を踏まえることなしに、未来はおろか現在も理解することはできないだろうし、
一足飛びに、今までのことはナシで、というワケにはいかないはずなのに、どうも
世の中、即断即結がお好きなようで、歴史認識の差だから、と言いながらも、その差を
考えることはなく先へ先へ、のムードとはズレまくらせていただきました上で、本blog
及びwebサイトは成立しております、と一言申し上げさせていただきたく存じます、と
いうか、本当のところは、ただ単に頭がよろしくないので(最近ますますこの事実に
気づかされることが多く甚だ残念なのですが)次から次へとものが書けず、退屈させて
しまいましてすいません、ということを、まず最初にお伝えしよう、という話です。
ちょうど1ヶ月前の2週間、フランスに滞在し、ライブ、小学校での音楽授業、市民ら
との音楽ワークショップを行なった記録をそろそろまとめねば、と思っていたところに
対談の第1回分(CF text版の注:アヤコレット)でもコメントした、美しい街という名の
ヴェルヴィルが、封切り翌日に観に行ったジャ・ジャンクー監督の新作「世界」の中で
奇しくも語られ、様々な背景を持ち合わせた移民たちの姿が、街、都市というものを
活気付けているのだな、とあらためて納得していた矢先に、この2週間に渡る暴動が
続いて、やはり、これに触れずに「フランス日記」もなかろうと、このような長々の
イントロダクションとなってしまったことを反省しつつ、ゆったり始めます、を宣言
させていただきます。今後とも、お付き合いのほどよろしくお願いいたします!
高橋智之
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